INTERVIEW

家族の病気をきっかけに、ゼロからスタートアップを起業

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社名 株式会社プロジェニサイトジャパン
代表者名 代表取締役 徐 綾
業種 ライフサイエンス
会社サイト https://www.progenicytejapan.com/

事業概要を教えてください。

米国・セントラルフロリダ大学医学部の菅谷公伸教授を中心とした研究チームの成果を社会実装させる為にスタートしたバイオテックベンチャーです。事業概要は、バイオ関連技術の研究開発で、主な開発物は内因性神経幹細胞を増加させる低分子化合物の開発を始めとし、他にも核酸抽出の必要がない次世代PCR機器の開発、エクソソームDDSに関する技術開発等と多岐に渡った技術開発を行っております。

起業したきっかけや起業を決断できたポイントはなんですか?

私にはダウンシンドローム症候群を持つ娘がおり、ダウンシンドローム症候群の合併症のひとつである発達障がいを軽減したいという思いで起業をしました。私はバイオに関するキャリアが一切ありません。娘が誕生してから発達障がいやアルツハイマーに関する論文等を読むようにはなり、多少自分なりに勉強しているところはありました。とはいえ、バイオのキャリアがない人間が、難関の創薬開発をするというのは無謀な挑戦ということで、周りの方にもかなり止められましたが、挑戦しなければ何も始まらないので、起業を決断しました。

起業後の苦労したエピソードやリアルな失敗談を教えてください。

バイオのキャリアがなく、知識も人脈も何もなくマイナスからのスタートでした。企業様との商談や会議でも次から次へとでてくる専門用語に追い付かず、自分の知識の無さに愕然としましたが、共同代表の菅谷先生と二人三脚で協力しながら、なんとか今に至っております。自分の無知さを知る事は、捉え方によっては、新しい世界が広がっているという事で、楽しくもありました。

起業してよかったと感じたことはなんですか?

神経幹細胞に作用し神経細胞を増加させる低分子化合物の開発は正直苦戦していますが、それでも経営のバランスを保ちながら少しずつ前に進める事ができていることは、起業して(始めて)よかったと思う事のひとつです。他技術等についても、製薬企業様との共同開発を通じて、事業化へむけて進んでおります。自分たちが開発に携わった技術が世の中に出て人々の生活を変えるかもしれないと思うとワクワクします。
また、事業展開の過程で本当に様々な方々との出会いがあり、大きな気付き・学びを得る事ができました。それらは、起業していないと経験できなかったことです。苦しいこともありますが、人生が豊かになったように感じます。

起業前と起業後で働き方や考え方に変化はありましたか?

起業前は当時保有する技術に対して結果をだす事だけに固執していましたが、起業後はノンゼロサム思考で新しい技術を開発する事や、変化することを意識するようになりました。また、事業を成功させる為に用意された答えや法則はそうあるものでもなく、常に状況や価値が変化する中、自分たちで考え答えを出すことが大事なのだと思うようになりました。
働き方としては、起業したタイミングがコロナ禍が始まった頃だったので、リモートの波にがっつり乗り、会社経営と事業運営、そして何よりも大変な子育てと両立することができたと思っています。

神戸市と接点を持って得られたメリットはなんですか?

神戸市にはポートアイランドに神戸医療産業都市があり、神戸医療産業都市推進機構とのつながりは、大きなメリットの一つでした。神戸医療産業都市推進機構のコーディネーターの方の手厚い伴走支援があり、事業を加速させることができました。また、神戸市独自の補助金が充実しており、経営面でも大きな助けとなりました。

なぜ神戸を選んだのですか?

既述のとおり、神戸市は全国的にもトップのスタートアップの支援体制があるということと、医療やバイオ関連のクラスターがある神戸医療産業都市で会社を運営するのは、事業のスピードアップを図れる重要な要素が詰まっていると感じたからです。

スタートアップを始めてみての感想や、働き方・生き方・考え方・人との関わり方の変化等あれば教えてください。

実は私はスタートアップは2度目の挑戦です。子供を出産する前に一度IT関連で起業を行っています。娘が様々な合併症を持ってうまれましたので、会社経営と子育ての両立が困難となり会社を辞めました。両立するのはほぼ不可能だったとはいえ、やはりものすごく悔いが残りましたので、今一度挑戦ができることを嬉しく思っています。また会社は「誰のものか?」という普遍的な問いの答えを昔から考えていましたが、以前は、会社は株主のもので、また利益至上主義的なところがありましたが、子供の闘病経験や支援をしてくださる方々や、思いをもって自らリスクを背負ってスタートアップをされている起業家の方々との出会いを通して、今では「株主、社員、社会」のものという考えをもつようになりました。資本主義ですので利益も勿論大事ですが、同時に公の為に尽くす事ができる事業を構築できたらと思っています。

"まち"としての神戸の好きなところは?

神戸の好きなところは、数えきれないほどあります。特に、昔と今が交差するような神戸特有の美しい街並や、貿易都市ならではのエキゾチックな街の雰囲気が好きです。色んなものが混ざって交差して、素敵な「化楽反応」が起きているといった感じで、街を歩くだけでワクワクします。コロナ禍前に、弊社の米国フロリダのボードメンバーがオフィスの視察に来ました。来る前は「神戸とはどんなところだ?」と不安な様子でしたが、実際来てみると、神戸医療産業都市には最先端技術を保有する組織が集積していることに加え、充実した観光コンテンツ、そして海と山を挟み町が広がるという、ポートライナーからの美しい景観を観て、不安も払拭され、すっかり神戸の街が好きになっていました。

これからスタートアップをする人に向けて、一言お願いします!

人生一度きり、自分の信念を信じて、突き進んでください!

▼インタビュー動画はこちらからご覧いただけます▼

https://www.youtube.com/watch?v=XcBWUnVAoLk&list=PLYLG4KN19GSsye9Ukd91pLV3NdBd5wao6&index=4