「ビジネスアイデアはあるけど、資金の集め方がわからない」と、多くの起業家を悩ませる資金調達問題。企業経営において切っても切り離せない「資金調達」問題に対して、第一線でスタートアップと向き合ってきた専門家を招き、シード期におけるデットファイナンス(借入による資金調達)・エクイティファイナンス(株式発行による資金調達)という2つの調達方法について出資側の視点からの説明やアドバイスを行って頂きました。
◆開催概要
<登壇者>
HIRAC FUND 甚野 広行氏
デライト・ベンチャーズ 西田 光佑氏
Incubate Fund 宮原 綾氏
日本政策金融公庫 田村 直哉氏
<運営・協力>
ANCHOR KOBE・神戸市
Back Casting 亀村氏
◆当日の様子
今回のイベントは大きく2つの構成となっており、Part1では「株式による資金調達」と題し、インキュベイトファンドの宮原氏を中心に、シード期ではどのような資金調達の方法があるのか、またそれぞれのメリットについて説明。甚野氏からはトレンドとして「最近の大型調達はエクイティに加えて、デットを伴う事例が多くみられる。デットを活用する背景として、株式の希薄化を抑える意図があり、特にレイターステージのスタートアップにおけるデットの活用シーンは増加傾向にある。」との見解も。またデットファインナンスがメインの金融公庫の田村氏からは融資を行う場合、「株主の構成を見て、経営の独立性を確認し、また既にVCからの出資が入っている場合は、そのVCの特性を見ている」とデットファイナンス目線での評価ポイントが伝えられました。目から鱗の情報に参加者の集中力が益々上がっていく中、イベントはPart2の「パネルディスカッション」へ。
最も多くの意見が出たのは各社の<投資・融資検討の際の基準>について。特にシード期ではサービスやビジネスモデルが確立されていない段階ではあるが、登壇者は口を揃えて言ったのが「課題設定の大きさと確かさ」を見ているとのこと。西田氏からは「シード期に事業計画の検証は困難。シード期においては仮説ベースで良いので課題の解像度高く、かつ市場としても大きいかを重要視しています。また課題が顕在化していることも事業として成立するために大切です。ユーザーヒアリングでは課題があると回答していても顧客が実際に課題を解決するためにアクションを起こしている状態でないと「あったら便利」で留まってしまうことが多い。」と出資者ならではの鋭いご指摘もありました。一方で<出資の相談タイミング>についてのテーマになると、VCの面々は「いつでもウェルカム」であるとのこと。ただし相談側のスタンスが非常に重要で、初回相談時からの成長も出資検討においては見ている場合があるため、起業家側もちゃんと意欲と熱意が必要なようでした。
その後は登壇者と参加者への交流会へ、どの登壇者にも相談者があとを絶たず予定時間を過ぎても交流が続いており、参加者のニーズにマッチしたイベントとなりました。
◆関係者からのコメント
ANCHOR KOBE様、神戸市様の非常に積極的なスタートアップ支援の取り組みに強く感銘を受けております。今後とも地域に貢献できるよう、尽力させて頂きます。
(HIRAC FUND甚野氏)
関西圏は東京につぐ第二の経済圏で、大きなマーケットポテンシャルがあります。大型資金調達やピッチコンテスト優勝など関西の会社が取り上げられる事例も増えてきて、盛り上がりを肌で感じています。先日、東京から関西に移住しましたのでこれからお気軽にお声掛けください!
(デライト・ベンチャーズ 西田氏)
現状スタートアップが首都圏に集中していますが、全国どこを拠点とようともビジネスが展開できる環境となっています。私自身、地方出身者として資金調達に関する情報格差を是正することはもちろん、各地域のスタートアップエコシステムの活性化に貢献していきたいです。
(インキュベイトファンド 宮原氏)
投資の視点と融資の視点は似て非なる所があります。起業家のみなさまは、それぞれの特徴を理解して、それぞれの適したタイミングでベストな資金調達を実現し、さらなる成長を目指してください。日本公庫神戸創業支援センターではANCHOR KOBEにて定例の個別相談会を開催しています。こちらの機会もぜひご活用ください!
(日本政策金融公庫 田村氏)
今回のイベントでは主に起業家を対象として開催を予定しておりましたが、事業会社にお勤めの方や学生にも参加いただき、みなさんが熱心にメモを取り、質問されている姿がとても印象的でした。神戸市としてシード期の支援を行うだけでなく、「学べる・相談できる」環境を提供していきますので、今後のイベントにもご期待ください!
(神戸市新産業課 齊藤 祐一)