神戸市では2016年より全国に先駆けてスタートップ支援に取り組んできました。先進的な施策の企画立案やプロジェクト推進の中核となってきたのが「イノベーション専門官」です。今回新たにグローバルを視野に入れ、神戸スタートアップ・エコシステムの構築を担う「イノベーション専門官」を公募しています。
専門知識を持つ外部人材を多数登用する神戸市。現在同ポジションで活躍する専門官が語る、神戸市で働く魅力とは何か、ご紹介します。
<インタビューイー略歴> |
織田 尭 神戸市イノベーション専門官 ■略歴 2021年7月入庁(神戸市新産業創造課・イノベーション専門官) 台湾生まれ、オランダ育ち。新卒で入社した化学メーカーを退社した後、クラウドファンディングを活用し、オーストラリアでの路上絵画販売を半年間実施し、アーティストとして活動。2017年より起業相談支援施設のコーディネーターとして、年間440名の相談に乗り、起業マインド醸成を目的としたイベントを多数企画。2019年3月より社内で立ち上げた、幼児〜小学生に探究的な学びやアート教育を届ける、数十種類の習い事を集めた習い事シェアスクールのスクール長を務める。2021年7月に神戸市に入庁。これまでに、起業に関心のある学生等の若年層にニーズにあった支援を届ける「KOBEワカモノ起業コミュニティ」や学生を対象としたシリコンバレー派遣プログラム、官民連携の行政・地域課題解決プロジェクト「Urban Innovation KOBE」などを担当。 |
必要な人に必要なサービスを届けたい
–大企業からなぜ行政の世界へ飛び込んだのか
織田専門官(以下、織田):前職で子どもの習い事事業をやっていた時に、お金を払っていただいた人にはサービスを提供できましたが、そうでない人たちに届けられないもどかしさを感じていました。そんな中、前職で神戸市と一緒に実証実験をする機会があり、金額の条件なしに必要としている人に広くサービスを提供することができる行政に興味が湧きました。ちょうどそのタイミングで、神戸市が「イノベ―ション専門官」の公募を開始したのを目にし、すぐに応募しました。これまでのキャリアの中で、習い事事業以外にも大学生向けに起業相談や起業イベントをしていたのですが、面談の中で、神戸市側も学生領域の支援で貢献できる人を探していると聞き、自分のしたいこととこれまでの経験で神戸市に貢献できると感じたため、神戸市で働くことを決断しました。
-実際に神戸市で働いてみていかがですか
織田: 神戸市に入るまで正直あまり行政の仕組みや役割を理解できていなかったように感じます。しかしながら、行政職員として働くようになり、必要としている人に無償でサービスを提供できることは良いことであると思う一方で、日本全体として加速する人口減少などの社会課題によって、市が活用できる予算も減っていくことが予測される中で、行政がすべきこととそうでないことをしっかり見極めて、公共サービスやインフラは戦略的に提供していく必要があると考えるようになりました。
–民間企業で働くことと神戸市で働くことに違いは感じますか?
織田:最も違いを感じたのは「指標」の違いです。民間企業は売上や利益という指標で事業を判断できますが、行政の場合は施策を判断する指標を設定しづらいと感じています。行政が施策を行うことによる民業圧迫や、効果のない施策行わないように、民間事業者の状況を把握することと、行政が「やりすぎない」ことを特に強く意識しています。一方で、働き方という側面においては「行政は堅く、融通が利かない」というイメージだったのが、今の新産業創造課は前職以上にアグレッシブな職員が多く、幅広い考え方を取り入れる柔軟性の高い組織で、元々持っていたイメージとは全く異なり驚きました。また新産業創造課では、民間企業出身の外部人材と行政職員が混在しているチームであるため、行政と民間企業両方の視点から「そもそもこの施策は本当に必要か」「効果があるのか」という議論がよく交わされるので、日々とても刺激を受けています。
専門的な知見を活かし、チームでプロジェクトに取り組む
–民間企業出身者が行政にいることはどのような価値があるのでしょうか
織田:民間企業で培った専門的な知見から、行政に対して利害関係なく意見を言える存在であるということが一番の価値だと考えています。また、市民に向けては「行政との距離を縮める」という役割があると思っています。行政職員という存在を遠く感じる方が多い中、自分の周りの人達から「行政との距離が近くなった気がする」と言ってもらうことが多くなりました。入庁以前、私が行政について理解していなかったように、行政職員がやっていること・価値が伝えきれていない部分がまだまだあると思いますので、私たちが積極的に市民、民間事業者と関係を持ち、巻き込み、巻き込まれながら一緒に神戸の街を作っていきたいですね。
–「イノベーション専門官」は行政にとってどのような存在なのでしょう
織田:行政職員の持っていない専門的知見から施策を戦略的に検討し、実際にプロジェクトとして動かしていける存在だと思っています。「なんでそんなにスムーズに仕事ができるのか」とよく言われるのですが、行政に関する知見やコネクションは既存職員のメンバーがサポートとして入ってくれるため、私たちが独りよがりに施策を動かすのではなく、円滑にプロジェクトを進められる体制になっています。その結果として、スタートアップに対して、ビジネス的な視点を持ちながらより彼らの事業が成長していくためのサポートを行うことが可能になっており、スタートアップの声を直接施策に活かすことができるなど、行政とスタートアップの架け橋となれているのではないでしょうか。イノベーション専門官は3年間という任期の中で、抜本的な挑戦や自分がいなくなってからも自走する仕組み作りを求められていますが、それらを少人数のチームで担当させてもらえるのは楽しく、自分のキャリアにおいても大きな経験になっていると感じています。
★イノベーション専門官 公募概要★
・募集職種:イノベーション専門官
・応募受付サイト:『AMBI』
※応募資格や待遇等の詳細は各応募受付サイトよりご確認ください。
・応募受付期間:2023年4月24日(月)~5月21日(日)まで
・特設ページ:https://www.enjapan.com/project/kobe_2304/