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【世界で6拠点目】Microsoft AI Co-Innovation Labが神戸にオープン!

2023年10月11日、神戸商工貿易センターに、世界6拠点目となる「Microsoft AI Co-Innovation Lab」がオープンしました。

オープン当日は、午前中に開所式・午後にはすでに他都市でラボ活用を行う、株式会社ユーハイムをはじめとする、AI活用を進める企業にご登壇いただき、今後のAI活用に関する事例共有とパネルセッションを実施。

先進的にAIを自社の事業で活用し、どのような効果が出ているのか、これから先どのように先端技術と付き合っていくのか。これまでの技術活用から得られた知見をもとに、各社が考える「AIとの関り方」についてお話されました

※本レポートでは、午後に行われたセッションの様子をご紹介します

神戸がユーザーのビジネスを加速させる場所へ

午後の部は、「AI がもたらす未来とビジネス共創によるイノベーション」と題し、オープン記念イベントとして、6拠点すべてのAI Co-Innovation Labの責任者である山崎氏と神戸ラボの責任者である鬼塚氏より、本施設にて提供される価値の説明が行われました。

ラボの設計自体は全世界共通の設計となっており、基本的な機能としては各拠点と同様のものが備わっているとのこと。続けて山崎氏は本施設が提供する価値として「AIを自分たちのビジネスに組み込むことには膨大な時間がかかるが、Microsoft AI Co-Innovation Labを活用いただくことで、その時間を短縮できるサポートがラボの機能であり、価値である」と説明されました。ラボの活用については公式サイトより応募いただき、ラボチームとの事前協議(協議前に応募企業とラボチームにてNDAを締結)を経て、共同開発に着手していく。鬼塚氏からは神戸ラボの概要について説明がされ、施設内部では実際にラボを活用した企業の事例展示、AI活用や各社の事例共有セミナーが開催されるとのこと。

Microsoft AI Co-Innovation Lab

クラウドに繋がる=世界と繋がる

その後、レドモンドのラボを活用し、自社事業にAI技術を取り入れた株式会社ユーハイム 代表取締役社長の河本氏より、ラボを活用し、どのようにAIを自社事業に組み込んだのか、事例を共有がされた。

ユーハイムは神戸に本社を置くお菓子メーカーであり、バウムクーヘンで有名な企業である。たくさんの職人の技術によって愛されてきた企業であるが、河本氏は「職人とAIはとても相性が良い」と話す。職人の持つ技術というのは、日本企業における強みの一つであるが、昨今の人手不足などの影響により、担い手不足が課題となっている。これまで職人が積み上げてきた技術をAIに学習させることにより、職人と変わらない品質でバームクーヘンが焼けるマシーン「THEO」の開発をラボ利用を通じて推し進めた。

河本氏いわく、企業におけるAI活用の第一歩は「インターネットに繋ぐ」ことがポイントであるとのこと。あらゆるものがインターネットに接続された現代社会において、当事者としてインターネットとモノを接続させるという発想が意外と身近にない中、今回の取組を通じて、インターネットに繋がることにより、クラウドと繋がることになり、様々な可能性が拡がっていったとAIの事業活用に対する手応えを参加者へ共有した。

ユーハイム 河本氏

人間とAIが共創する社会へ

河本氏の基調講演に続き、すでにAI活用を進める企業のパネルセッションが行われた。

セッションは「ものづくり×AIソリューション」と「人材育成×AIソリューション」の2つ観点について繰り広げられた。

■ものづくり×AIソリューション登壇者

株式会社ビジョンケア 代表取締役社長高橋 政代氏
株式会社ユーハイム 代表取締役社長河本 英雄氏
株式会社オプティム 代表取締役社長菅谷 俊二氏
モデレーター:株式会社博報堂 執行役員青木 雅人氏

1つ目のセッションでは、人間と同程度の理解レベルまで進化してきたAIが、今後人間が持っていたクリエイティビティまで代替していく可能性があるのかという問いを立て、AIの進化に対して各社がどのように向き合っているのか、意見交換が行われた。

ビジョンケアの高橋氏は「医療の現場では、医師が経験でやってきたことがAI によって代替できることがわかってきた」と、自身が開発中のサービスを一部公開した。必要最低限のコミュニケーションはAIで代替できるようになってきたと進化の結果を共有する一方で、AIが導き出した答えがまだ懐疑的だと感じる感情的な面を考慮して、人を「説得する」という点においては、まだ人を介してコミュニケーションを取る方が有効な手立てであると話す。

またモデレーターの青木氏から「AIが人より得意なこと、人がAIより得意なことは」という質問が登壇者に投げられたのだが、河本氏は「人が苦手なものをAIが得意で、AIが苦手なものは人が得意なのだと感じる」と職人とAIの融合を間近で見て、そのように感じたと話す。菅谷氏はこの問いに対して「いつの時代のAIを、誰、と比べるのかは重要なポイント」だと話し始め、「現時点でのAIであれば、平均的な人間の能力を上回っている。比べていくのではなく、何をAIに任せるのか考えていくべきだ」と今後のAIと付き合い方について自身の考えを述べられた。

ものづくり×AIソリューション

■人材育成×AIソリューション登壇者

monoAI technology株式会社 社長室對馬 優氏
シスメックス株式会社 エグゼクティブエンジニア 石原 直樹氏
川崎重工業株式会社 執行役員加賀谷 博昭氏
モデレーター:株式会社博報堂 執行役員青木 雅人氏

続いて、「人材育成×AIソリューション」とテーマを変え、新たなセッションへ。AI活用が進んでいくこれからの時代において、技術の中身を理解しているだけでなく、どのようなスキルセットを人は求められるのだろうか。

石原氏は、ソリューション開発に携わるエンジニアについて「より人間らしいスキル」が必要になると話す。「生成系AIの台頭により、大抵のコードは自動で書いてくれるようになったが、良いコードを書く、UXを高めるなど、製品開発において複数の要素をバランスさせるための動きがこれからエンジニアに求められることになる」と必要とされるスキルが変わっていくだろうと自身の見立てが伝えられた。對馬氏も同様に「単純な技術理解だけでなく、どのようにAI活用すべきか考える力が求められる」と技術との融合をリードしていくような人材が重要な存在になりえるとのこと、また別の観点で「進歩していく技術を楽しいと思いながら、触れていける人材も必要」だとスキルだけでなく、マインドセットについても言及された。

登壇者が現場で活躍する人材ということもあり、熱量の高いセッションが展開される中、次の問いとして青木氏から「人材育成方法や研修方法は変わるのか」と質問が投げられた。對馬氏は自社のXR事業で講座・セミナーなどを行った経験から「ロジックで画一的な設計がされてきた研修プログラムが、AIにより個人に照らし合わせて必要なトレーニングを提供してくれるようになる」とAIが学ぶべき内容を最適化してくれると話す。続けて石原氏が、個人にフォーカスし、前提としてAIやデータ活用に関するリテラシーを上げていくことが必要とした上で「収集したデータを読み解き、正しく意味を解説できるようならなければならない」と伝えた。自社の事業と業務は正しく理解し、データと繋ぎ合わせることで事業をスケールさせる人材のニーズが高まるのではないかと予測した。

セッションの締めとして、ラボ誘致に携わり、尽力された川崎重工業の加賀谷氏より、参加者への御礼とともに、今後のラボの展望として「企業だけでなく、学生もラボを活用いただくことにより、若年層から先端技術に触れられる機会を作り、世界で活躍できる人材を輩出していきたいと」と力強いメッセージで、未来への期待を込め、締められた。

Microsoft AI Co-Innovation Lab エントランス