NEWS

スタートアップが理解しておく企業法務の6つの基本 【知的財産権編】

スタートアップが理解しておく企業法務の6つの基本 【会社設立編】

<講師>

TMI総合法律事務所 神戸オフィス 

弁護士 中西 健太郎氏

昭和50年神戸生まれ神戸育ち。1999年東京大学法学部卒。2000年10月弁護士登録。

20年間東京の大手法律事務所においてM&Aやファイナンス、紛争など多くの企業法務案件をスピード感をもって担当。2020年から三宮で執務開始。

今回、神戸がビジネス拠点、知的拠点としてさらに発展することに寄与できればとの思いから、こちらに登場させて頂きました。

<講師からのメッセージ>

起業する際、対象となるビジネスの内容がどのようなものでも、また、起業者が明確に意識している場合でもそうでない場合でも、ビジネスの根本的なルールを決めているのは法令ですし、さらに、会社は自社が締結した契約に拘束されることになります。

今回は、起業し、リーガルリスクを可能な限り減少させて安定的に会社を成長させていこうとされる方向けに、そうしたリーガル面で意図しない落とし穴を減らせられる様、基本的な法律上の留意事項を確認します。

なお、以下はあくまで一般的な留意事項を簡潔に記載したものとなります。そのため、個別のケースで問題が生じた場合には別途慎重に検討頂くべきことになりますし、以下に述べた以外にもご留意頂くべき事項は多岐にわたりますが、まずは、初期的なご理解の一助となれば幸いです。


<知的財産権編:目次>

  • ①知的財産権と称されるものにはどのような権利があるのか
  • ②知的財産権の登録の要否について
  • ③知的財産権の利用に際しての留意点

◆知的財産権と称されるものにはどのような権利があるのか

いわゆる知的財産権と称されるものは、典型的には、

商標権 = 一定の標章に付与される権利

特許権 = 「発明」(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)を保護する権利

意匠権 = 「意匠」(物品の形状等、建築物の形状等又は画像で、視覚を通じて美感を起こさせるもの)を保護する権利

実用新案権 = 「考案」(自然法則を利用した技術的思想の創作)を保護する権利

著作権 = 「著作物」(思想又は感情を創作的に表現したもので、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの)を保護する権利

があります。

このほか、営業秘密が不正競争防止法により保護される場合があり、また、種苗法では品種登録制度が、半導体集積回路の回路配置に関する法律では回路配置の創作者等についての設定登録制度が設けられています。

◆知的財産権の登録の要否について

先述の主な知的財産権のうち、商標権、特許権、意匠権、実用新案権は、登録を受けることで発生することになり、登録に際しては審査があります。そのため、原則として、権利として確保するためには登録を受けることが必要であり、先に出願した者の権利が帰属する制度となります。

これに対して著作権は、著作物となった時点で権利が生じます。著作権にも登録制度はありますが、それは著作権の移転などを第三者に対抗するための制度であるので、権利の発生自体が登録制度の下に置かれている訳ではありません。

◆知的財産権の利用に際しての留意点

知的財産権は、自ら保有するものを自らが利用する場合以外にも、他者が有するものを使用すること、他者に自らが保有するものの使用を許諾することもあり得ます。

この場合、いわゆるライセンス契約と称される契約を締結することとなり、ライセンスを付与された者に実施権(特許の場合)が付与されることとなります。実施権は、

  • 専用実施権(特許権者も含めた他者による実施ができず、登録が必要)
  • 通常実施権(第三者には付与されないものを独占的通常実施権と呼ぶことがあります。)

に分けられます。