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【オープンイノベーション】『地域共栄 未来創成』 次の100年を創り出す神姫バスの新たな挑戦

<インタビューイー略歴>
神姫バス株式会社
事業戦略部 事業戦略課兼不動産課 課長                 
坂東 範人 氏
 
<経歴>
2007年神姫バス株式会社へ入社。バス事業に関する営業・広報・精算業務を担当した後、2年目より10年間、TSUTAYA店舗の店長や事業統括マネージャーを経験。その後、グループ会社へ出向し、保育園・児童施設の経営管理に携わり、現在は新規事業創発・CVC運営と不動産事業の課長を務める。

1827年8月、神姫自動車株式会社設立より、およそ100年の歴史を積み上げてきた神姫バス株式会社。公共交通インフラとして、常に地域住民に寄り添い、移動における利便性を突き詰め、人々の生活を支えてきました。少子高齢化や人口減少に加え、生活や仕事が「新たな様式」へ変化しつつある中、次の100年に向けて、既存のバス事業を基軸に「まちづくり、地域づくり」を推進していく企業への変革に取り組み始めました。新たな歴史を積み上げていくべく「ひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム」への参画を決めた神姫バスが描く未来とスタートアップとの連携における期待について伺いました。

※ひょうご神戸スタートアップ・エコシステムコンソーシアム;兵庫県、神戸市、神戸商工会議所が、賛同いただいた企業・団体等とともに、世界で活躍するスタートアップ企業の輩出をめざし、世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市の形成による、スタートアップ支援の一層の推進を目的として設立された団体

 


地域に根ざしていくために、地域に入り込む

-まずはコンソーシアムへの参画を決めた理由を教えてください

坂東氏(以下、坂東):昨年の2月頃に当社のCVCとしての活動やオープンイノベーションへの取組 をご覧になった兵庫県の職員さんより、お声がけいただいたことがきっかけです。お声がけいただいた当時、大変申し訳ないのですが、私自身コンソーシアムの存在を認知しておりませんでした。当社としては社内で積極的に取り組んできたことが社外の人に伝わっているということは非常にポジティブなことでした。またバスと名の付く会社でありますが、実は保育・介護・農業にも事業領域を広げておりますので、こういった領域は積極的にスタートアップと連携したいと思っていたため、目指すべき方向性が合致していると感じましたので参画させていただくことにしました。

-長い歴史のある神姫バスが、新たな価値を生み出すための活動に大きく力を入れるのにはどのような背景があるのでしょうか

坂東:現在はCVCの機能を保有しておりますが、CVCという言葉も検討する以前は全く聞きなれない言葉であり、社内でもほとんど認識がなかったと思います。また長い歴史がある企業でありますが、これまでの事業拡大のほとんどが「自前主義」で展開してきたという歴史があります。そのような状況で、今後もこれまでと同じように長い歴史を積み上げていけるのか、そのために何ができるのかをいざ考えてみると、やはり「自前主義」では限界があり変革の必要性を感じていました。また、我々は企業理念として「地域創生・未来共栄」掲げ、行動指針を「誠実に、果敢に、おもしろく」と置いておりますが、これから先の未来でも我々が掲げる信念を体現していくための方法として、昨今注目が集まりつつあるスタートアップを中心とした社外とのオープンイノベーションが重要だと考え、CVCの組成や外部と積極的に連携していく現在の取り組みに至っております。

-長い歴史のある神姫バスが、新たな価値を生み出すための活動に大きく力を入れるのにはどのような背景があるのでしょうか

坂東:その通りです。つい先日、社長の長尾からも100周年を迎えるにあたり、これから先の未来に向けてどのような価値を提供していくのか全員が本気で考えるようにと、全社に向けて発信がありました。各事業がそれぞれ施策を考えていく一方で、全社のセンターピンとしては「地域に根ざす」というところに置いており、地域づくり・まちづくり企業になるという宣言をしました。。昨年の4月には地域事業本部というセクションも立ち上げ、本格的にその領域に取り組む体制が出来ている状態です。ただ、地域づくり・まちづくりといっても、実際に何をすることで本質的に貢献できるものなのか、解像度が上がり切っておらず、手探りの状態ですので、ちゃんと地域に入り込んで様々な問題を整理しながら進めていきたいと考えております。


地域住民とともに、理想的なまちづくりを

スタートアップとはどのような連携を想定されていますか

坂東:やはり一番の狙いは地域課題をともに解決していくこと、そして当社自身が抱える課題を一緒に解決してくれるスタートアップと協業したいという想いがあります。事例をご紹介させていただくと、神戸にはポートアイランドと三宮を結ぶ公共交通として、ポートライナーがあり、当社もバスを走らせているのですが、特に通勤時間帯ではポートライナーの乗車率が高く混雑があり、それに対応すべくポートライナーの運行ダイヤも過密を極めています。一方で相対的にバスの乗車率はあまり高くありません。この公共交通のバランスをとることは社会課題であるとの考え方から、当社としてはバスの乗車率をあげたいと思い神戸市様とも連携しながら施策を打ち出してきましたが、なかなか解決の糸口が見つからずにいました。そんな時にたまたま人流分析を行う会社をCVCから紹介いただく機会があり、現在では人流を見ながらバスのダイヤを最適化するプロジェクトを行っています。このように、当社として課題は認識できているものの、打ち手が見つからず解決ができていなかったり、打ち手はわかっているが技術を持っていなかったりしますので、自社では難しい取り組みもスタートアップと取り組むことで解決の兆しが見えてくると思っています。

-逆にスタートアップは協業により、どのようなメリットを受けられるのでしょうか

坂東:やはりバスが旗艦事業の会社ですので、路線や観光領域含めてバスというアセットがあるということ、公共インフラと呼ばれる、地域に根ざした地域交通事業ということは事業エリア内で他社にはない強みだと思っています。加えて付帯事業の多角化との連動性もありますので、各事業領域を掛け合わせたサービスを開発する・提供するフィールドを用意できるのはスタートアップの皆さんにとってもメリットになりえるのではないかと考えております。また社内での事業創発にも力を入れており、「社内ベンチャー制度」というものがあります。社内からアイデアを募り、良いものであれば事業化していくという公募制度です。ここから出てきたアイデアとマッチングする機会も作れると思いますので、連携するための門戸は比較的多方面に広がっているため、スタートアップがつながりやすい基盤は作れているのではないかと思っています。またその先にはCVCからの出資も視野にいれることも可能ですので、その点でもメリットを提供できると考えています。

‐これほどまでに全社で「オープンイノベーション」に取り組む理由を教えてください

坂東:繰り返しとなりますが、「地域に根ざす」をセンターピンとして捉え、「まちづくり、地域づくり企業」になることを全社の方針として掲げています。昨今、人口動態などの変化に伴い、地域では交通を含めた様々な課題が発生しておりますが、「公共交通インフラ」と呼ばれる領域で事業を行う我々は、地域に対してサービスを提供し続ける義務があります。単純に収益性を考えれば、人口減少地域は減便をしていく方が良いと思いますが、各社が同様の取り組みをした場合、その地域に住む住民の移動手段が何も残らなくなってしまいます。そのような事態に陥る前に、当社でバスを走らせることはできないけど、別の手段で維持できるのならば、その手段を持つスタートアップと当社が連携をして、サービス提供を行えば良いと思いますし、そうすることで自然と「自前主義」からの脱却にも繋がると思っています。バス事業を基軸に、地域で起こる様々な課題を網羅的に解決していき、地域にお住まいの方々とともに、理想的なまちづくり、地域づくりを行っていきたいと考えております。さらには、そこで出来上がった成功モデルを日本全国にも展開していけると良いと思っています。