2021年に地域経済の活性化と県内産業の競争力の向上を図るため、兵庫県や民間企業等と連携し、飛躍的な成長が見込まれるスタートアップへの投資を行う「ひょうご神戸スタートアップファンド」を設立した神戸市。GP(ジェネラルパートナー)として本ファンドの運営を行っているBIG Impact株式会社主催にて「地域でのイノベーション創出」に向けたイベントが開催されました。当日のレポートを前編・後編の2回に分けてお届けします。※本編は前編です
★開催概要
<登壇者>
株式会社ABAKAM 代表取締役 | 松本 直人氏 |
兵庫県産業労働部新産業課 課長 | 木南 晴太氏 |
神戸市新産業部新産業課 課長 | 武田 卓 |
<モデレーター>
BIG Impact株式会社 代表取締役 | 細野 尚孝氏 |
<主催>
BIG Impact株式会社 |
★当日の様子
<Agenda> 1. 地域イノベーションを取り組み続ける理由、意味 2. 地域イノベーションの取り組みの楽しさ、成功事例 3. このような活動を広めるための工夫や視点とは |
Session1:地域イノベーションを取り組み続ける理由、意味
まず、イノベーション創出の潤滑油として支援をしてきた登壇者たちがこれまでの取り組みを振り返りながらその意義について語りました。
ABAKAM 松本氏
地域イノベーションに取り組む理由は大きく2つ。
1つ目として、イノベーションは課題からしか生まれないものであり、地域には課題が非常に多いということ。
2つ目は、大都市圏は経済合理性で動くことが多いが、地域では経済合理性ではなく「好き嫌い」で商売しており、この好き嫌いこそが本質をつくことが多い。その地域を愛する人たちが好き嫌いによって必要なものを選択することは良いことであり、だからこそ、その地域で想いを持った人が地域イノベーションを起こすことが大事だと思う。
兵庫県 木南氏
地域でも意識が高い人が起業するのはわかりやすいが、必ずしもみんながそうではないし、イノベーションが本当に必要かと問われると不要と感じる人もいる。後ろに人がついてきてくれないと意味がないため、この取り組みの必要性を地域の人々に認識してもらうことが重要だと思う。イノベーションがこの地域においてどういったものを指すのか「共通認識」が持てるとうまく進むのではないか。
神戸市 武田
地域では「学生の人口流出」が大きな課題となっている。その一要因としてやりたいことや興味が持てるものがその地域にないことが影響している。行政として地域イノベーションを促進することで大学卒業後に起業が出来る、地域のスタートアップに就職できる状態にすることで人が地域に根差すための手助けになるのではないかと思う。
それぞれの立場・視点から、地域イノベーションの重要性が語られた。一方でイノベーションを起こす当事者・支援者だけではなく、その価値を享受する地域の人々への貢献も忘れてはならないとの示唆がありました。
Session2:地域イノベーションの取り組みの楽しさ、成功事例
日本国内において先駆けてスタートアップ支援、イノベーション創出に向けて取組を開始した兵庫県と神戸市。そもそもすぐに成果が出るというものでもない中、どのような楽しさを見出しており、またどのような事例が生まれているのか。
ABAKAM 松本
成果に対しての時間軸は大都市圏と地域では異なる。短い時間軸で生まれる価値は大都市圏に集中しているが、長い時間をかけて価値が見出されるものが地域では経済合理にさらされづらいため眠っていることが多い。長期での研究や開発を続けることを周りが許容してくれるという側面があり、そういった取り組みを支援できるのは楽しみでもある。
兵庫県 木南氏
さきほど話したように、地域の人たちが実装しやすい環境を作ってくれるということが重要で、その仕組みを作ることが非常に楽しいと感じている。一方で、地域に価値を提供するためにチャレンジをしている人が楽しんで取組めていることも重要だと思っており、そういう人達の後押しも力を入れるべきだと考えている。
神戸市 武田
地域イノベーションにおけるゴールは「社会実装」だと思っており、この観点において、成功事例が少ないことは今後の課題だと認識している。しかしながら、行政が率先してこの領域に力を入れた結果として様々なプレーヤーがイノベーション支援の輪に入りこんできてくれることは嬉しいことであるとともに、SNSで気軽に「繋ぎ、繋がれる」関係性の人たちが増えることは非常に楽しいと思っている。このようなコミュニティが今後の地域イノベーションの成功確率をあげてくれると思っている。
それぞれがイノベーションの輪が広がること、輪によって支えてもらえることに楽しみを抱く中で、モデレーターの細野氏から「仲間が増やすために気を付けていること、仲間に入ることのメリットとは何か?」という問いを投げられました。松本氏は化学反応を例に「異なるものが合わさると新しいものが生まれる、そして反応を起こすそれぞれが自分自身の役割をちゃんと理解して行動することが重要」だと回答。武田からは「接触頻度を増やし、繋ぐこと・繋がることにお互いが嫌悪感を抱かない状態になれることが重要」であると、人との関係性に言及しました。
本イベントの続きは後編(2022年12月22日 公開)へ