兵庫県・神戸市内のリソースを終結し、域内にて新たなビジネスを生み出しやすい環境を整えるために結成されたひょうご神戸スタートアップエコシステム・コンソーシアム(以下コンソーシアム)。本コンソーシアムが主催の「チャレンジャー交流会」の第7回目が2023年10月30日(月)にANCHOR KOBEにて開催されました。
今回のイベントは、スタートアップと支援団体・金融機関・事業会社を繋ぐイベントとなっており、今回の登壇したスタートアップは「J-startup KANSAI」に選定された企業を中心に関西屈指のスタートアップにて構成されました。
神戸を拠点として活動する受賞スタートアップ
過去最大の集客となった本イベント、開会の挨拶は神戸市の久元市長の挨拶によりスタート。全国に先駆けてスタートアップ支援に乗り出した神戸市の取り組みを振り返りつつ、スタートアップにより大きな成長を促すためにも「この場にいる人が力を合わせて支援を推進していくことが重要」だと言及した。
その後、第一部として「J-startup KANSAI」に選定されたスタートアップ4社のピッチがスタート。
<登壇企業 ※登壇順に紹介>
スタートアップのピッチ後は参加した支援機関から、さまざまな角度で多数の質問がスタートアップへ寄せられた。今回参加した支援機関としては、金融機関・事業会社が複数参加しており、スタートアップの事業戦略から知財戦略・資本政策など経営面での鋭い質問がスタートアップへ投げかけられた。
質問に答えつつ、スタートアップからも支援機関に向けて、要望が伝えられ、株式会社GODOTの森山氏からは、自社サービスの特性や今後の展開を踏まえて「リアルタイムデータを保有している企業とは積極的に提携を模索していきたい」とのこと、株式会社イムノロックの白川氏からは、創薬領域では海外のメガファーマ達が積極的にスタートアップへの投資・連携をしていることを引き合いに出し、これから大きな市場を捉えていく上で海外企業との連携が重要だと前置きし、そのために「研究開発のステージをどんどん進めていくために資金調達が必須」と、支援機関への協力を仰いだ。
第一部の終了後は、登壇スタートアップと神戸市長がそれぞれ軽く対話を持った。市長からはスタートアップが持つ技術に対しての質問がされ、登壇者がより詳細に自分たちのサービスや技術について説明を行い、交流を深めた。
アンケートから考える地域発スタートアップの現状
第二部は、コンソーシアム会員である三井住友信託銀行株式会社が行っていた調査「スタートアップサーベイ」を用いたトークセッションを実施。
今回の調査では関東圏を中心に528社のスタートアップに回答いただき、調査の設問には「経営戦略」「組織論」「ファイナンス」とそれぞれの分野に精通する有識者の監修をもとに作成されたとのこと。
本セッションでは調査に関わっている三井住友信託銀行の小川氏がモデレーターとなり、登壇スタートアップとの意見交換を進めた。
最初のテーマとして、「首都圏スタートアップと地方スタートアップの差」について小川氏から投げかけられると、登壇者全員が口を揃えて「人材採用の難しさ」を挙げた。特に今回登壇した4社中3社が研究開発型のスタートアップということもあり、事業形態も起因している模様、バッカスの丹治氏からは「研究を行うのであれば現場にいることが重要であるため、リモートワークのような形態を取ること自体が難しい」と言及があった。一方でイムノロックの白川氏は「大学発スタートアップ」という利点を活かし「大阪・京都など関西圏の大学同士で連携している部分もあるため、現時点では不便さを感じていない」と地域間で連携が出来ているという現状を伝えた。人材獲得という点において地域ならではの難しさがありつつも、各社それぞれの戦い方も見出しており、PITTANの辻本氏は「大企業からの出向者を受け入れることでレベルの高い人材を獲得できる」と自身の取り組みを紹介。大企業から出向以外にも、大学発スタートアップは地場の優秀な学生に積極的にアプローチをかけるなど地域ネットワークを利用した採用へ注力しているようだった。
次のテーマとしては「資金調達環境」。このテーマも登壇者の意見は全員一致。地方だからといって資金調達で困るようなことはないとのことで、もちろん地方に比べれば首都圏の方が多くのプレイヤーが存在しているものの「自分たちが足を運べば受け入れてもらえる」と困る様子は見せなかった。また政府系の補助制度などをうまく使うことにより資金調達ができる事例も紹介され、あくまでも事業に必要な資金を「誰から」ではなく、「どのように」集めるのかという点が重要だと会話が繰り広げられた。会話の流れに沿うように、小川氏から「誰から調達をするのかは大事だと思うが、どのように考えているのか」と登壇者へ質問。大半の企業が事業会社からの調達を希望しているようで、資金面だけでなく事業連携という意味でもそれぞれが持つ技術を活用できる会社と連携することを望んでいる。別の観点ではGODOTの森山氏が「スタートアップサーベイ」の結果で、IPOが近づくにつれて、調達需要が少なくなっていることに言及。「IPO間近でも資金調達が可能なのであれば、経営戦略上取れる手段が増えるので、そういったタイミングでも出してもらえるところがあれば積極的に調達していきたい」と事業フェーズを見極めた上で計画的に調達していく姿勢を見せた。
スタートアップから支援側へのメッセージ
時間いっぱいまでセッションが盛り上がり、最後はモデレーターの小川氏より「この場にいる支援機関はみなさんにとってどのような支援・連携ができるのか」と質問。それぞれが一言ずつ参加している支援者側に向けて率直な想いを伝えた。
丹治氏・辻本氏からは環境整備について、「研究開発型スタートアップが活動できる場所が限られてきている。改めて国も巻き込み、科学技術の発展のために必要な環境を整備してほしい」とコメント。森山氏・白川氏はスタートアップのプレゼンス向上の観点でコメント。森山氏は「起業初期の時点で、信用力を付与いただけることが重要だと思っている。積極的にサービスを導入いただくことが大きな支援となる」と話し、白川氏は「今回のようなイベントに出る機会を提供いただけることで、会社として認知が取れる状況は貴重だと思っている」と両社から社会との接点を増やしていくサポートも必要だと参加者に伝えられた。
イベントの最後は「J-startup KANSAI」の事務局を務める近畿経済産業局の砂川氏から総評をいただいた。砂川氏は今回神戸を代表するディープテック企業が集まったことに触れ「関西圏でも地域ごとに特徴を持ったスタートアップが生まれている。神戸ではディープテック企業が生まれてきているように、それぞれの地域の特性をしっかり打ち出していくことが今後の運営においても重要だと感じた」と関西圏の中で生まれつつある、地域ごとの強みを世の中に発信していく姿勢を見せていただいた。